RADEON LE

許された無法者

メーカーATI
ジャンルビデオカード
発売時期2001年2月頃
性能★★★☆
マニア度★★★☆
影響度★☆

RADEON LE(表) RADEON LE(裏)

ATIはGeForce2 GTSの対抗製品としてRADEONを市場に投入し、高い評価を得ました。RADEONはGeForce2 GTSと比較して32ビットカラー時の性能が高く、またATI製ビデオチップは画質に定評があったため、表現力や画質を特に重視するゲームユーザーなどの間で人気を得ていたようです。そのRADEONの非公式な廉価版として販売されていたのがRADEON LEです。

RADEONの正式な廉価版として、ATIはRADEON LEとは別にRADEON VEという製品を出荷していました。RADEON VEはHydra Visionと呼ばれる機能を持ち、この機能によって1枚のビデオカードで2台のディスプレイに出力することができます。しかし、廉価版の制限として、RADEONには実装されていたCharistma Engineと呼ばれる高性能なハードウェアT&L機能は省略されていました。一方、RADEON LEはATIの正規の製品ではなく、ATIによる積極的な宣伝は行われませんでした。ATIのWebサイト内で唯一ともいえるRADEON LEのページには、この製品がアジア市場においてOEM用に供給される製品であることが記されていました。パーツショップなどで見かけるRADEON LEは、そのOEM品が何らかの事情でバルク品として出回ったものだったのでしょう。

RADEON VE/LEは共にGeForce2の廉価版であるGeForce2 MXの対抗製品でしたが、RADEONの廉価版として、ハードウェアT&Lの機能を持たないRADEON VEが、公式にはGeForce2 MXの対抗製品ということになっていました。しかし、RADEON VEのDirect3D描画性能は同価格帯のGeForce2 MXに遠く及ばず、力不足の感は否めませんでした。そのため、性能にシビアな国内の市場においては、大きなシェアを占めていたGeForce2 MXにとって、それほどの脅威とはならなかったのではないかと思われます。価格と性能のバランスを考えれば、RADEON LEの方がGeForce2 MXの対抗製品としてふさわしかったといえます。

疑惑のLE、その正体とは

RADEON LEは基本的には、通常のRADEONの動作クロックを下げたものです。RADEONのコア/メモリクロックは166MHzまたは183MHzですが、RADEON LEでは、148MHzに設定されているようです。ただしビデオメモリはDDR駆動であり、ハードウェアT&Lを利用することができるため、描画性能の面ではGeForce2 MXと遜色ないといえるでしょう。ただしGeForce2 MX搭載ビデオカードにはTwin ViewというHydra Visionと同等の機能があるものもあり、このような機能を利用したい場合にはGeForce2 MXかRADEON VEを選ぶ必要がありました。

それでは実際にRADEON LEはどの程度のパフォーマンスを実現していたのかといえば、通常の状態では、32ビットカラーにおいてGeForce2 MXと同等程度、16ビットカラーでは大きく劣るという性能のようです。ただし、これはこのビデオカードが持つ本来のパフォーマンスではなく、ハードウェアレベルでRADEONとほぼ同じものであれば、もう少し高い性能を持っていてもおかしくないとも考えられます。その考えは間違ってはいません。実際に、RADEON LEの性能は、RADEONと同一のドライバを利用しながらも、そのドライバによってHyper Zテクノロジーというビデオメモリの利用効率を向上させる機能が無効にされ、本来よりも低いレベルに押さえ込まれていました。具体的な部分までは触れませんが、かなり早い時期から、この機能を有効にし、RADEON LEの本来の性能を引き出す方法はWebで紹介されていました。

この非公式なビデオカードは一体何のために存在しているのかという問題を考えてみると、ひとつの仮説にたどり着きます。結論から述べれば、RADEON LEはRADEONのできそこないではないかと考えられるのです。CPUなどを製造するとき、通常は同じ原料から出来上がったCPUをテストし、高クロックでの動作テストにパスしたものは高クロック品として、パスしなかったものは低クロック品として出荷されるといわれています。それと同じことがビデオチップでも行われ、RADEONの正規のクロックでの動作テストにパスしなかったものがRADEON LEとして出荷されるのではないかという仮説を立てることができるのです。しかしこれはあくまでも憶測で、事実に基づいた説ではないことを断っておきます。しかし、RADEON LEの仕様を考えれば、そう考えるのが最も自然であるといえるのではないでしょうか。

LEの不運

ドライバによって性能を抑えていることについては、非公式の製品ながらも、メーカー側がRADEONとの競合することを恐れている様子が窺えました。ATIには、絶対的な性能を持つGeForce2 GTSを擁し、GeForce256の存在意義を危うくすることも厭わずGeForce2 MXを投入したNVidiaほどの自信は感じられなかったのです。RADEONの性能に揺るぎない自信があるならRADEON VEからハードウェアT&L機能を削除することなく市場に投入できたはずで、RADEON LEは生まれなかったでしょう。

国内におけるAT互換機の組み立て市場においては、性能が絶対的な基準であると言っても過言ではありません。RADEON LEは廉価版であるとはいえ、標準の状態で性能を押さえ込むという方針をとったことは致命的でした。GeForce2 MXも、メモリの帯域幅を制限することによって本来あるべき性能を無理に抑え込んでいる仕様なのですが、それでもそれまでの廉価版ビデオチップの常識を破るほどの非常に高い性能を持っていたからこそ、市場を制覇するに至ったのです。そのGeForce2 MXと互角に渡り合うには、廉価版という制限の中で、ビデオチップの持つ性能をすべて開放する必要があったのではないでしょうか。ATIがそこまで踏み切れなかったことが、メインストリーム市場においてNVidiaの独占状態が長い間続いた要因のひとつでもあると思われます。

もたらされた悲劇、そして…

ところで、この物語には後日談があります。その後ATIはGeForce3の対抗製品としてRADEON 8500を始めとする一連の製品を出荷し、特にRADEON 8500は性能面でGeForce3を完全に凌駕しました。この頃に初代RADEONとほぼ同等の製品として追加されたのが、RADEON 7200です。このRADEON 7200とRADEON/RADEON LEは共通のドライバで動作しますが、実はRADEON 7200に対応したドライバではRADEON LEの動作についても変更されています。3DMark2000により確認したところ、機能的にわずかな制限はあるようですが、標準でHyper Zテクノロジーは有効になっているようです。長い間苦しめられていたドライバによる制限という十字架が外され、RADEON LEは標準の状態で本来の性能が発揮できるようになりました。これはユーザーにとっては喜ばしいことですが、同時にATIが新しく高性能なビデオカードを世に送り出し、RADEON LEがすでに過去のものとなったことを象徴しています。

類稀な素質を持ちながらその力を見せることができなかったならず者が許されたとき、時代は待つことなく進んでいました。RADEON LEが最初から本領を発揮できていたなら、GeForce2 MX搭載ビデオカードの購入層の何割かはRADEON LEに流れたことでしょう。しかし、それも戻らない過去の話です。RADEON LEの運命は、ATIがそれを非公式のものとしたときに決まっていたのです。もしRADEON LEが性能を制限されず、ATIによって公式に認められた製品であったならば、GeForce2 MXとRADEON LEは絶好の好敵手として市場で激しい争いを繰り広げていたことでしょう。その争いはかつてあったビデオチップベンダーの群雄割拠の時代のように、新たな伝説となったかも知れません。しかし、市場は次の世代へと移り変わり、生まれるべき伝説は幻のままとなってしまいました。

なお、RADEON 8500の登場以降は、末尾にLEの付いた製品が正式に出荷されるようになりました。

デバイスのプロパティでRADEON LEがRADEON 7200と認識されている

画像のように、ATIから提供されるドライバCatalystでは、RADEON LEがRADEON 7200として認識されるようになった。

RADEON LE データ

RADEON LE 主要データ
項目内容(その他詳細不明。基本的にRADEONと同じ)
RADEON LE
コアクロック150MHz前後(148MHz?)
メモリクロック150MHz前後(DDR動作)
ビデオメモリ容量32MB
その他の機能ハードウェアT&L(Charisma Engine)
冷却ヒートシンクのみ
基板サイズ約17cm×8.5cm(ブラケット部、端子部含まず)
インタフェースAGP 2X/4X

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