Cyrix MII

第6世代の策士

メーカーCyrix
ジャンルCPU
発売時期1997年5月頃
性能★★★☆
マニア度★★★★
影響度★★

Cyrixは昔からIntel製プロセッサの互換チップを作ってきたメーカーです。Pentiumの互換CPUとして6x86という製品があり、改良版として、6x86MXという製品がありました。その後継としてリリースされたCPUがMIIです。後継と書きましたが、実のところ、機能的には6x86MXと全く違いはありません。そこで、6x86MXの仕様を少し解説します。

6x86MXは、Intel P55C(Pentium MMX)の互換CPUです。同様の機能を持ったライバルとしてはAMD K6があり、動作クロックも同じような範囲をカバーしています。MMX命令は当然サポートしています。それどころか独自のMMX命令も実装されていますが、あまり使われることはありません。

P-Rating

Cyrixのこの時期のCPUで特徴的なのは、P-Ratingという数値で性能のめやすを表していることです。P-Ratingはある定番ベンチマークプログラムの整数演算のテストの結果から、Pentiumでいえば何MHzに相当する性能を発揮できるかというめやすとしての値です。6x86MXでは200MHzでPR233など、実クロック的に1ランク程度上のPentium MMX相当と表示されています。ただ、整数演算機能では確かに同クロックのPentiumより優れているのですが、浮動小数点数の演算性能では1ランク下のPentiumにも及びません。しかしながら、前身の6x86のときには16KBしか搭載していなかったL1キャッシュが4倍の64KBに拡張されているため、6x86と比較するとクロックの差以上に体感的な性能の違いがあります。

P55Cの互換CPUとしての機能だけを見ると、6x86MXは完成度の高い製品です。浮動小数点演算がやや遅いだけでなく、MMX命令の実行も遅いという話もありましたが、逆にビジネスアプリケーションには強く、浮動小数点演算を多用するような用途でない限り、同ランクのCPUと比較して高いパフォーマンスを発揮します。

違うのは刻印だけ?

MIIは、そんな6x86MXのリニューアル版として発表されました。内部コア的には6x86MXとほぼ変わらないもののようでしたが、最大の進歩はシステムクロック100MHzのものが追加されたことです。私が実物を目撃したことがあるものの中で最も高クロックのものは250MHz(PR366)ですが、Cyrixの発表には信頼性がなく、何が正しいのかさっぱり分からない状態でした。350MHz程度までは出荷される予定だったようですが、本当に出荷されたのかどうか、私は知りません。また、6x86MX時代から、同じコアクロックでもシステムクロックや倍率の設定が異なるものがあり、実物の刻印を見ない限りは正確に分からないものがありました。

MIIは当初、PentiumIIの対抗製品として発表されたようでしたが、6x86MXと変わらない内容では勝負になるはずもなく、時間がたつにつれ、CeleronやK6-2へと標的を変更していきました。そして、1999年頃には、K6-2とのクロック競争についていけなくなり、市場からフェードアウトしていきました。MIIの動作クロックが上がらなかった理由は、K6-2が内部的にはRISC型プロセッサに近い構造になっているのに対し、最後までクロックを上げにくいCISC型の構成をとっていたからではないでしょうか。

Cyrixの頂

IntelおよびAMD以外のメーカーのCPUには明確な世代分けがしづらい部分もありますが、第5世代をPentium、その改良版をPentium MMX、第6世代をPentium Pro/IIとすると、第6世代の条件は、少なくとも命令を内部的にRISC型に変換して実行することだと思います。K6はPentiumIIとはかなり構成が異なりますが、MMX命令のサポート、内部的には命令をRISC命令に変換して実行することなど、確かに第6世代と呼べるだけの条件は備えています。それに対しMIIは自称第6世代ということになっていますが、内部構成的にはP55Cと変わらないため、実質的には第5世代です。しかし逆に考えれば、第5世代の構造で最高クロックを達成したCPUでもあり、その点に関しては評価してもいいでしょう。

MIIに関しては、発表されたクロックグレードが出荷されなかったり、未発表のものが出荷されていたりして、かなりの混乱があったようです。Cyrixは自社工場を持たないため、製品は委託生産ということになります。自社で生産技術を最適化していくことができないため、動作クロックの向上を正確に予測することは難しく、希望的観測で発表するという方法を採らざるを得なくなります。その観測が外れてしまったために、やむを得ず発表と異なる製品を出荷することになったのではないでしょうか。

しかし、これは穿った見方をすれば、確信犯的なものであったようにも思えるのです。P-Ratingを最後まで採用していたことなどを見ても、Cyrixというメーカーは、知略謀略の類で生き残りを図っている節がありました。性能なども強気に発表することで自社製品の魅力をアピールし、ビジネスを成功に導こうとしていたのではないでしょうか。Intelのようなブランド力を持たない互換プロセッサメーカーは、性能面でよほど優位性のある製品を投入するか、独自の方向性が市場に受け入れられない限り、ビジネス的に成功を収めるのは難しいと思いますが、Cyrixとしては、動作クロックさえ順調に上がれば、MIIにはCeleronやK6-2と互角に渡り合える実力があると考えていたのでしょう。

つわものどもがゆめのあと

結果的には、Cyrixのビジネスは失敗しました。親会社のNational Semiconductorに一方的に見放され、MIIの行方はうやむやになってしまったのです。その後VIAに買収され、開発チームは残りましたが、二度とMIIが復活することはありませんでした。MIIの後継CPUはVIA傘下で開発されるはずでしたが、そのプランは破棄されることになりました。このことに関しては、CyrixIIIのところで述べたいと思います。

MII データ

6x86MX/MII データ
項目内容
MII/6x86MX
動作電圧Vio 3.3V,Vcore 2.9V他
システムクロック周波数66MHz,75MHz,83MHz,100MHz(MIIのみ)
L1キャッシュ64KBユニファイド、4-Way set associative
特殊命令MMX、一部独自MMX命令
命令デコード形式x86
パイプライン7段
実行ユニットXパイプ+Yパイプ
製造プロセス0.3μm、0.25μm

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