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AMDはx86プロセッサのかなり初期の頃から、Intel製品のセカンドソース品を製造していたメーカーです。以前から技術力は高かったようで、立場的に第5世代であるK5の頃からすでにx86命令をRISC命令のような命令に変換して実行する構造を採用していました。また、Athlonの開発の頃、かつて世界最速といわれたAlphaプロセッサの開発元DECから、Alphaシリーズの開発に携わっていた技術者が大量に流入したという話もあり、今後AMDの製品に採用される技術にも期待が持てます。
K6シリーズにはK6、K6-2、K6-III、K6-2+、K6-IIIE+等多数の製品がありますが、それぞれCPUとしての基本部分が大きく異なるわけではありません。K6-2は基本的にはK6に3D Now!命令を付加したもの、K6-IIIはK6-2のコアに256KBの2次キャッシュを内蔵したものです。K6-2+等、末尾に+が付く製品はAthlonの登場より後にモバイル向けとしてリリースされたもので、プロセスルールの縮小、2次キャッシュの内蔵、Power Now!テクノロジーへの対応などの改良が施されています。
K6シリーズの歴史は、Socket7の歴史でもあります。Socket7はPentium用としてはSocket4、Socket5に続く3代目のプラットフォームで、P5バス時代の終盤にリリースされたほとんどの互換CPUを装着して動作させることができます。IntelはPentium MMXの後、PentiumIIでプラットフォームをSlot1に移しましたが、AMDのK6シリーズとCyrixのMIIのおかげで、Socket7の命運は予想外にも、かなり後の時代まで引き伸ばされることになりました。このことに関しては、別の機会に語りたいと思います。
K6-IIIはCoppermine PentiumIIIと共に、第6世代の集大成といえるプロセッサです。私が考える第6世代の条件は次のとおりです。まず、x86命令をRISCライクな命令に変換して実行すること。SIMD命令をサポートしていること。第6世代を名乗るなら、少なくともこの条件を満たしていてほしいものです。第6世代でも後半のものは、2次キャッシュオンダイが一般的になり、浮動小数点演算用のSIMD命令をサポートするようになりました。P5/P6バス用でこの4つの条件をすべて満たしているプロセッサは、K6-IIIとCoppermineコアのPentiumIIIだけです。
Socket7マザーボードは、L2キャッシュをボード上に搭載しています。Socket7の時代も終わりにさしかかる頃のものでは2MBのキャッシュメモリを搭載したものもあり、K6-IIIの利用時にはそれがL3キャッシュとして利用されます。L1キャッシュの64KB、L2キャッシュの256KBと合わせてK6-IIIシステムは合計で2368KBものキャッシュを備えることになり、メモリアクセス性能がものをいう現代のシステムとして、非常に強力な武器を持っていました。
それだけの優れた要素を持ち合わせていたK6-IIIですが、普及するに及ばなかった理由はいくつかあります。中でも最も影響が大きかったと思われるのは、動作クロックのラインナップが少なかったことです。K6-2は最終的に550MHzまで順調に動作クロックが上がりましたが、K6-IIIの動作クロック周波数は400MHzと450MHzだけでした。さらにもうひとつは、並行して販売されていたK6-2の価格が安かったことです。K6シリーズの歴史も終わりに近づいていたある時期、K6-2/500MHzの価格は8,000円程度、K6-III/450MHzは15,000円程度でした。K6-IIIはL2キャッシュを内蔵したことによる高コスト化や歩留まりの悪化などのため、また当時のAMDのハイエンド製品としてやや高めの値が付けられていました。
ただ、L2キャッシュを内蔵したことにより、純粋に動作クロック周波数だけに依存するような処理を除けばK6-III/450MHzの実質的な性能はK6-2/550MHzよりも高かったのです。そのK6-IIIがライバルとして想定していたのは、KatmaiコアのPentiumIIIでした。K6-III/450MHzは確かにKatmaiコアのPentiumIII/550MHzを上回るほどの整数演算能力を持っていました。しかし、浮動小数点演算の能力に関しては、PentiumIIの頃から、複数の定番ベンチマークで、どのメーカーのどのCPUも、Intel製プロセッサを超えることはできなかったのです。K6-IIIもK6-2とコア部分が同等である以上、例外にはなり得ませんでした。
それでもその頃、Intel製プロセッサと真っ向から勝負できたのはK6-IIIだけでした。内容的にはSocket7どころか第6世代の集大成といえるものであり、互換CPUメーカーが次々に沈黙していく中、AMDだけがK6-IIIでPentiumIIIに挑んでいたのです。しかし、K6-IIIは販売面においては健闘したとはいえませんでした。それはメーカー製PCには採用されなかったも同然であり、そのほとんどが、出荷数の面では不利な組み立て市場でしか売れなかったからです。あるいは、K6-2が搭載されたメーカー製PCはそれなりにあったことを考えると、歩留まりが悪くメーカー製PCに搭載するだけの数が用意できなかったのではないかという憶測をすることもできます。しかし、最大のポイントは、K6-2と比べて動作周波数の面でインパクトがなかったということでしょう。ベースクロック97MHzで動作するK6-2/533MHzという変則的な製品が出荷されるなど、この頃には既に動作周波数偏重の風潮が現れ始めていました。その他、消費電力が大きい、詳しくない人にとってはローエンドと見られているK6-2のイメージを引きずっているなどの理由が考えられ、しかも価格が高いため、採用に踏み切れなかったというところでしょう。
K6-IIIがどれだけ優れていたとしても、時代の主流になり得なかったのは紛れもない事実です。過去、数多くの挑戦者たちが新たに時代の主流にならんとデファクトスタンダードに立ち向かってきました。ある者は勝利を収めて王者となり、ある者は敗れて歴史の陰に葬られていったのです。K6-IIIは決して勝者ではありません。勝者以外のものがすべて敗者であるなら、K6-IIIもまた敗者です。しかし、Intel製プロセッサに挑戦しようとする者すらなかった時代、唯一対抗できるだけの実力を持ち、真っ向から立ち向かっていたことは事実です。結果は敗北に終わりましたが、K6-IIIは決して退かない、誇り高き挑戦者だったのです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Codename Sharptooth/K6-III | |
| 動作電圧 | Vio 3.3V,Vcore 2.4V/2.3V |
| システムクロック周波数 | 100MHz |
| コアクロック周波数 | 400,450MHz |
| L1キャッシュ | 32KB Instruction,32KB Data 2-Way set associative |
| L2キャッシュ | 256KBフルスピード |
| 特殊命令 | MMX,3D Now! |
| 命令デコード形式 | RISC86 |
| パイプライン | 7段 |
| 実行ユニット数 | 7 |
| 製造プロセス | 0.25μm、0.18μm(K6-III+,K6-IIIE+) |