Intel815

間に合わせの標準

メーカーIntel
ジャンルチップセット
登場時期2000年夏頃
性能★★★
マニア度なし
影響度★★

Intel820の失敗はまるで、かつてIntelが82440BXで自ら作り出した完全無欠のチップセットという幻影を乗り越えることがいかに困難であるかを象徴しているかのようでした。しかし、どんな理由があったにせよ、i820の失敗により、Intel製のチップセットが世の情勢に遅れをとってしまったことは事実でした。

当時、Intelは自社製チップセットにおいて、ふたつの重要な命題を抱えていました。それが、FSB133MHzのPentiumIIIとPC133 SDRAMへの対応です。i820は133MHzのFSBに対応し、PC133 SDRAMより広帯域なDirect RDRAMを標準のメインメモリとしていましたが、さまざまな理由によりDirect RDRAMの普及は遅々として進まず、i820自体も低調なままでした。その詳細はIntel820およびDirect RDRAMの項を参照してください。

FSB133MHzのPentiumIIIとPC133 SDRAMの双方に対応したチップセットとしては、VIA TechnologiesのApollo Pro 133Aがあり、i820の失敗に乗じてある程度の成功を収めていました。しかし、Intel製のチップセットは440BX以前から性能、安定性ともに定評があり、PentiumIIIやCeleronといったIntel製CPUと組み合わせるチップセットとしてはIntel製しか眼中にないという人が国内では多数派でした。したがって長期間使い続けてきた440BXマザーボードに拡張を重ねながらだましだまし使ってきた人も多く、そのような人にとって、IntelからFSB133MHzおよびPC133 SDRAMをサポートするチップセットが発表されることは念願だったのです。

Intelはi820の失敗が決定的になってきた頃、ローエンド向けだったIntel810の後継チップセットとして計画していたIntel815を、急遽メインストリーム向けに変更します。このような経緯で生まれたチップセットであるが故に、Intel815はやや特徴的なチップセットとなりました。その特徴のひとつは、外部AGPを備えているにもかかわらず、本来ならメインストリーム向けチップセットには必要のないグラフィック機能がMCHに統合され、GMCHとなっている点です。

GMCHのグラフィック機能はIntel740をやや強化した程度と、当時においても中途半端な性能のもので、それが必要な人はAGPスロットがいらないだろうし、AGPスロットが必要な人は内蔵グラフィック機能はいらないだろうと揶揄されたりもしました。実際にも、AGPの性質上、内蔵グラフィック機能とAGPビデオカードは排他的にしか利用できないため、AGPビデオカードを利用する人にとっては内蔵グラフィック機能は緊急用程度の用途でしかなかったのです。

Intel815が純粋なメインストリーム用チップセットとしてはどことなく中途半端な印象を与えるもうひとつの理由は、その最大メモリ搭載量にもあります。512MBという最大メモリ搭載量は当時のローエンド用チップセットと考えれば普通でしたが、それ以前から、メインストリーム用として設計されたチップセットはそのほとんどが、少なくとも1GB以上のメインメモリをサポートしていました。512MBという限界が実際的な問題となることは少ないという意見もありましたが、後にこの制限が、使用されるメモリ量の過不足という問題ではなく、スペック上の限界として実際に問題になることになります。

Intel815系のチップセットとして実際に多く出荷されたのは、サウスブリッジとしてUltra ATA/100やネットワーク機能などをサポートするICH2と組み合わされたIntel815Eです。さらにその後、GMCHからグラフィック機能を削除したIntel815EPという後継チップセットが登場しました。ただ、このIntel815EPはIntel815Eとグラフィック機能の有無以外の違いはなく、形だけ440BXなどのメインストリーム用チップセットに似せたごまかしだと揶揄もされました。

しかしながら、Intel815系チップセットは、結局は曲がりなりにも440BXの後継者としての地位を得ることになります。しかし、CPUがPentiumIIIからPentium4への移行期でもあり、さらにはプロセッサバスの電気信号の変更(注:AGTL+からAGTL。システムバスと表記してある文献が多いので、システムバスの方が正確かもしれない)などに対応するために改版を重ねるなどしたため、440BXのように惜しまれつつ舞台を去るというわけにはいきませんでした。

ひとつのチップセットが世に出回り、ユーザーがそれを利用する時間はさまざまですが、1年から2年程度はそのチップセットが現役であると考えることができるでしょう。そのIntel815系チップセットが現役である間に、SDRAMの価格がかつてないほど極端に暴落しました。一時はPC133 CL3のSDRAM DIMMモジュールは128MBで1,000円余り、256MBで2,000円余りという信じがたいほどの安値となり、256MBのDIMMをまとめ買いしたり、512MBのメモリモジュールを買う人も珍しくはなくなりました。そこで問題となるのが、Intel815系チップセットの512MBという中途半端な制限です。メモリモジュールの価格が上に述べたような水準まで下がってくると、当然ながら、小額の投資で簡単にチップセットの制限を超える容量のメモリモジュールを入手できます。しかし、それだけ大容量のメモリを入手できたとしても、Intel815系のチップセットでは、それらをすべて生かせないという状況が生じたわけです。純粋にメインストリーム用として開発されたチップセットなら、その現役の時代において制限を超える容量を搭載することは、金額的にも技術的にも容易ではないのが普通でした。このような部分においても、Intel815は根本的にはローエンド向きの統合型チップセットであるための弱点をさらけ出してしまったのでした。なお余談ですが、この頃からWindows9xは512MBまでしかメモリを認識できないという説を耳にするようになりましたが、その一部は標準的なチップセットだったIntel815E/EPの制限と混同したことが原因となったのではないかと考えられます。

いくつかの面で中途半端な存在であったIntel815ですが、上に述べたように、結果としてIntel製チップセットのスタンダードとしての役割を充分に果たしました。いくらIntelがブランド力をもってi820を普及させようとしても効果は薄く、たとえ間に合わせであってもi815が容易にスタンダードの地位を獲得したその理由は、i815がサポートする機能を市場が望んでいたからでしょう。i820が出荷されてから、あるいはそれよりも前から人々は、「Intel製で、FSB133MHzのPentiumIIIが使える、PC133メモリに対応の」チップセットを待っていたのです。どう取り繕ってもi815はそのための間に合わせであったことは言い逃れできませんが、スタンダードの地位を獲得したこともまた紛れもない事実なのです。PentiumIIIの最後を飾るチップセットとして、また、登場までの経緯も含め、AT互換機の歴史上、Intel815系は非常に大きな意味のあるチップセットだったのです。

Intel815 データ

Intel815 主要データ
項目内容(i815E)
Codename Solano/Intel815(E)
GMCH(Graphics Memory Contoroller Hub,ノースブリッジに相当)
プロセッサバスP6,66/100/133MHz
CPUソケットSocket370(PentiumIII,Celeron)
メインメモリPC100/PC133 SDRAM 最大512MB
AGPAGP2.0 2X/4X 1.5V/3.3V対応
チップ間接続 ハブアーキテクチャ(266MB/sec. MAX)
ICH(I/O Controller Hub,サウスブリッジに相当)
IDEUltra ATA/100
SoundAC'97 Audio Codec
USB最大4ポート
その他の機能ネットワークコントローラ内蔵

関連項目


PCパーツものがたり